相続支援コンサルタントの植野です。
2月11日の日本経済新聞によると、同社が最高裁に行った取材で、相続人不存在によって国庫に帰属した財産収入は、2023年度に1,015億円と初めて1,000億円を超えたことが明らかになりました。2013年度は約336億円だったことから、記事では「相続人なき遺産(=国庫に帰属する財産)が10年で3倍になった」と大きく報じられました。この相続人なき遺産は、近年ライフスタイルや価値観の変化とともに配偶者や子どものいない単身者は増加していることから、今後も増え続ける可能性が高いと言われています。
国庫に帰属する、とは相続財産が国の所有物になり、その管理や使途が国に委ねられるということです。つまり相続人がいない方が自身亡き後の財産の行き先を示さないということは、被相続人の所有財産を国に相続させ、その後の管理や使途を国に委ねる、という意思表示をしていることと同義です。意思なき意思表示、とも言えるかもしれません。ちなみに国庫帰属分の遺産の使途は明確には決まっておらず、何らかの歳出に充てられるということです。国の立場からすると「臨時ボーナス」に該当する歳入なのかも知れませんが、ご自身の最期の財産がそのような使われ方をされることは本意でしょうか。もし不本意であれば必要な対策を講じなければ、その想いは実現することはありません。
「自分が死んだ後のことなんて関係がない」「最後は誰かが片づけてくれる」とおっしゃる方もおられます。それはその通りです。
一方、視野を広げて社会全体を見渡してみると、公益的な役割を担っているところに中々お金が回っておらず、支援が必要なところが多く存在します。代表的なのが、子どもの支援、生活困窮者支援、国際協力、医療支援、災害支援、環境保全、動物愛護、教育機関などです。それらに皆さんがお持ちの財産が回っていくことで、社会問題の解決につながり、より良い社会が実現できます。
それを実現する有力な方法が「遺贈寄付」です。
遺贈寄付とは、生前に使いきれなかった財産を、自分の死後に寄付するという仕組みです。寄付先は、自治体やNPO法人、学校法人などの公益団体、その他の団体や機関など多岐に渡ります。自分の遺産を、自分が関心のある社会問題の解決に役立てることができるため、遺贈寄付は「人生最期の社会貢献」の手段と言われています。実は欧米では古くからよく利用されている制度なのですが、近年、日本においても注目を集めるようになってきました。
遺贈寄付による社会貢献は、寄付先のみならず寄付側へも大きな喜びを与えてくれます。人生の終盤に何物にも代えがたい「心の豊かさ」を得ることができるかもしれませんね。
「どこに寄付をしたらいいか分からない」という方は、参考までに一般社団法人 日本承継寄付協会のホームぺージにある「えんギフトWEB版」をご覧ください。様々な寄付先がどのような社会貢献事業を行っているのかが分かります。
https://www.izo.or.jp/info/index.html
もちろん、遺贈寄付は相続人がいない方だけではなく、相続人がいる方も、それほど多くの財産をお持ちでいない方も実施することができます。個人的に寄付は慣れることが大切だと思いますので、まずは興味がある団体に少し寄付をしてみて、寄付先の活動の様子を知り、寄付に対してご自身がどのように感じるか向き合うことも良い手段だと思います。
遺贈寄付を検討される際は、遺贈寄付する財産の種類や金額、法務面や税金面、遺言作成時の注意点など様々な点から検討を重ねる必要があります。詳細は2024年9月1日発信のメールマガジンを参照ください。
https://www.e-souzok.com/report/archives/700
弊社では、一般社団法人日本承継寄付協会が認定する承継診断士が在籍しており、遺贈寄付に関するご相談の受付からその実現、アフターフォローまでのサポートをワンストップで行っています。いつでもお気軽にご相談ください。